エンディングドレス_岩手_アムールドクチュール

威厳を感じた父

30代 息子

会社の代表を務める父が病に倒れ、医師から余命宣告を受け、覚悟は決めていましたが、いざ亡くなると、なにをどうすればよいのか、自分がどこにいればいいのか、そんな状態でした。

矢継ぎ早に、いろんな人が集まってきて、葬儀の話がどんどん進んでいき、喪主である自分が取り残されたような気分でした。

そんな時に、叔母が、
「あんたの父さんは、カッコつけだったから、こんな安っぽい死に装束で行きたくないんじゃないかい?」と笑いながら声をかけてくれました。

何だか、父が本当にそう言ってるような気がしました。

(生前に来ていたスーツに、気に入っていたネクタイでもつけてやろうか?)
葬儀屋にそんな話をしたら、死後硬直があるから、なかなか着せるのは難しいと言われ断念。
余計なことを言ったかなぁと後悔しました。

数時間後、何処で調達したのか、母が不思議な色の着物を持ってきて、父の死に装束の上に着せるように葬儀屋に頼んでいました。

今まで、見たことのない高そうな着物で、絹でできていると言っていました。
父の顔が、誇らしげに見えたのは気のせいかもしれませんが、急に父の威厳を感じました。
死に装束でも、こんなに雰囲気が変わるのかとびっくりしました。

後から、母が、こちらのお店の人と知り合いで、衣装を直ぐに準備してくれたことを知りましたが、これからは、こういうものが求められるのではないかと思いました。

ほんとうにお世話になりました。