昭和36年に両親の大反対の末結婚した父と母。母が病床についたとき、父が小さな声でつぶやいた。
「母さん、結婚式もあげれなかったな・・・」
母は、しわしわの手を父に伸ばし、
「そうね、ウェディングドレスなんか着てみたかったわね」と父に微笑んで、それから二週間後に他界しました。
母との結婚に、父なりの積年の想いがあったことを、娘である私は、その時初めて知りました。
たまたま、知人から、ア・ムールド・クチュールさんのエンディングドレスの話を聞いて、父と一緒に、母らしいドレスを選ぶことができました。
美しい色の、シルクの柔らかなドレスを着た母の顔が、満足げに微笑んでいるように見えました。
「お父さん、よかったね。お母さん喜んでいるね」
「なんだか、とっても美人さんに見えるね」
振りむいて見た父の顔は、とても誇らしげに見えました。
たった一枚のエンディングドレスが、父と母の気持ちを改めて繋げてくれたような、不思議な気持ちになりました。
ほんとうに、ありがとうございました。